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メルセデスが提唱するクルマの新たな価値「CASE」

words:Masanori Yamada

究極に理想的なクルマ社会の実現を目指し、メルセデス・ベンツが中長期戦略に掲げる「CASE」。その取り組みの現在、過去、そして未来像を紹介する。

2016年9月に行われた「パリモーターショー2016」で、メルセデス・ベンツは、パワートレインの変革を掲げた「EQ」と同時に、「CASE(ケース)」と名づけた中長期戦略を発表した。先の記事で、ディーター・ツェッチェ ダイムラーAG取締役会会長 兼 メルセデス・ベンツ・カーズ統括が「EQ」について「移動手段としてのクルマの存在意義を拡張し、特別なサービスと体験する、まったく新しいモビリティである」と述べたと紹介しているが、その「存在意義の拡張」を包括的に実現する「CASE」は、自動車の在り方や概念を変える革新的なプランでもある。

Connected(コネクテッド)

Connected(コネクテッド)

快適で安全、そして新しい次元のエンタテインメントをクルマが提供する時代へ

Autonomous(自動運転)

Autonomous(自動運転)

自動車事故ゼロ社会の実現のために。自動運転の先駆者が目指す「究極の理想」

Shared&Services(シェアリング)

Shared&Services(シェアリング)

より柔軟さを増すクルマ社会にダイムラーAGが提案する、最先端のサービス

Electric(電動化)

Electric(電動化)

クルマの歴史が大きく変わる。パワートレインは今、知性を持ち、動き始める

「CASE」の構成要素である「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング)」「Electric(電動化)」の中で、実現に向けていち早く動き出したのは「A」=自動運転だった。1978年のSクラス(W116)に導入されたABS、1981年のSクラスで発表されたエアバッグ、1995年のSクラスクーペに採用されたESPなど、メルセデスが世に先駆けて送り出した数々のアイデアは機器類の画期的な進歩を背景に実現したものだが、今から遡ること50年以上前から、メルセデスは、さらに進んだ今日の姿をすでに見ていた。

メルセデスの自動運転研究開発は、クルーズコントロールがそもそもの出発点であった。1960年代には、欧州で販売されるメルセデス・ベンツ全車に標準装備された。そして1980年代、商用車「ヴァリオ」を実験車両にしてこの研究開発が具体化するものの、車載コンピュータの情報処理能力が追いつかず、当時の技術レベルでは半自動(自律)運転が限界であった。そうした自社での研究開発と並行してメルセデスは、あらゆる交通状況の中で安全性を高め、未来のクルマ社会の主要問題について解決策を研究する「PROMETHEUS(プロメテウス=Programme for a European Traffic with Highest Efficiency and Unprecedented Safety=最高の能率と空前の安全性を備えた欧州交通計画)」プロジェクトを創始する。欧州研究事業Eureka(ユリーカ)の一環として進められた研究を通じ、研究者たちが導き出した手法とは、カメラやセンサーを用いてクルマに知性を持たせるというものだった。プロジェクトが終わる頃には、ネックだったコンピュータの情報処理能力は格段に向上。4つのカメラと当時最新のマイクロプロセッサを搭載して製作されたSクラス(W140)の自動(自律)運転ロボットカーは1995年、ミュンヘンからコペンハーゲンを走りきることに見事成功した。

センサーやカメラを活用した安全システムは2010年以降、急激な勢いでの進化・発展を遂げた。「Intelligent Drive」の名のもと、メルセデスの各車種にもアクティブディスタンスアシスト・ディストロニック (自動再発進機能付き)/ディスタンスパイロット・ディストロニック、ステアリングパイロット、アクティブブレーキアシストなどいくつものADAS(先進運転支援システム)が装備されるようになり、安全性が飛躍的に高まった。その礎を築いた1995年のロボットカーは、まさに先駆者だったのである。

ABSやESPが登場した時代と異なり、ロボットカーにその起源を持つADASを総合的な車両制御システムとして連動させることが可能になった現在、自動運転の実用化に向け、技術面の課題はほぼクリアできるレベルにまで達している。車両自身の判断で駐車するパーキングパイロットは自動運転技術の応用例であるが、これを「Connected(コネクテッド)」のテクノロジーが進化させたものがリモートパーキングアシストだ。クルマの外からスマートフォンのアプリで駐車操作を行えるこの機能をはじめ、スマートフォンアプリを通じてさまざまななサービスを受けられるテレマティクスサービスが、この8月からスタートした「Mercedes me connect」である。リモートパーキングアシストのほか、事故や走行不能になるなどの万一の場合にボタンを押すだけでコールセンターにつながりトラブル対応をサポートする機能や、ボタンを押すだけで専門オペレーターに24時間つながるコンシェルジュサービスなど、これまでにない新しいデジタル・カーライフを実現。クルマ自らが意思を持って通信を行う「Connected(コネクテッド)」の“最新事情”といえるだろう。
http://www.mercedes-me-connect.jp/

ADASを基礎に大きな進化を遂げた「Autonomous(自動運転)」、それらの技術を発展的に応用し、各種のサービス提供までも領域とする「Connected(コネクテッド)」の広がりが意味するのは、クルマの電動化にほかならない。ゆえに、自動車のサスティナビリティへの回答としてパワートレイン変革を掲げ、ハイブリッドやEVを主役に据えて「CASE」の「Electric(電動化)」を担うメルセデスの新ブランド「EQ」の誕生は必然だったのだ。この「EQ」の詳細については、前回の記事を参照していただきたい。

「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Electric(電動化)」の進化の先には、あらゆる観点から安全で経済的な、驚くほど柔軟に移動の自由をかなえる「Shared & Services(シェアリング)」の実現も見えてくる。マサチューセッツ工科大学(MIT)教授(航空宇宙工学)のエミリオ・フラッツォーリ氏は、ダイムラー社の取材に対し、この「シェアリング」について、「共有型経済と自動運転は同じコインの両面なのだ」と述べている。そしてダイムラーAGは現在、世界8か国、25都市で「car2go」というシェアリングサービスを行っており、今後も新たなシェアリングの形を提示していくことだろう。

自動車は今、100余年にわたって築いてきた自動車の在り方や概念を打ち破ろうとしている。パワートレイン、エコロジー、セーフティに、インテリジェントを加えたクルマ社会全体の再構築──。自動車の未来をたぐり寄せる「CASE」は、世界初のガソリン自動車を発明した「自動車の生みの親」が提示する、新しいクルマ社会へのロードマップなのである。「第45回東京モーターショー2017」では、「CASE戦略」のもと、未来のモビリティを体現した展示が行われる。なかでもご注目いただきたいのは、アジア初公開となる「Electric(電動化)」の進化を示すコンセプトカー「Concept EQ A」「Mercedes-AMG Project ONE」「smart vision EQ fortwo」。その他多彩なラインナップの計21台が展示されるほか、コンセプトカーや「EQ」ブランドの紹介、「Mercedes me connect」など、メルセデス・ベンツ/スマートの現在と、未来へのヴィジョンを紹介するプレゼンテーションも実施する(10月27日~11月5日)。メルセデス・ベンツがクルマ社会の新しい扉を開く瞬間を、ぜひ、会場で確かめてほしい。


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