
小学校4年生の夏休み、私は住まいの静岡から妹と二人だけで新幹線に乗り、横浜の叔父のところに遊びに行った。駅に着くと、叔父は買ったばかりという黒のメルセデスで迎えに来てくれていた。
子ども心に「カッコイイ!」と感じたピカピカのクルマは、Eクラスのセダン。私たちは早速クルマに乗って、横浜の街をドライブした。クルマが走り出すと、皆こちらに注目している気がした。チャイナタウンの煌びやかな牌楼、竣工間もない見上げんばかりの横浜ランドマークタワー。次々と流れていく光景に驚嘆し、車窓に張りついて見とれている妹と私を、叔父はニコニコと見守ってくれた。
叔父は早いうちに父親を亡くし、若くして淡路島から横浜に出てきた人物。不動産会社を一から立ち上げ、成功を成したと聞いている。さまざまな修羅場をくぐり抜けてきたのは想像に難くないが、その分人一倍情に厚くとても優しい人だった。大人になったら、私もメルセデスに乗ってみたい。素敵な叔父の姿に憧れて、幼い私はそんな気持ちを抱いたものだ。
先日叔父の七回忌があり、思い出話に花が咲いた。「今の自分があるのは周囲のおかげ」と言うのが口癖だった叔父。礼を尽くし、周りや世の中に還元していくことの大切さを知る叔父だったからこそ、多忙な合間を縫ってのドライブに連れて行ってくれたのだと今になってわかる。
帰り道、夫に「私たちもメルセデスを購入したいね」と話してみた。叔父が大切にしていた人生の美学や心の持ち方。そんな生き方のエッセンスを、メルセデスを通して実感し受け継いでいけたらと思っている。
※このコンテンツはユーザーの皆様からのストーリーをもとに再現しており、モデルの表記や仕様については実際と異なる場合があります。