A Mercedes Moment / Vol.1 /

スタイリストとしての転機を乗り越えた時、一緒にいた黒のステーションワゴン。

メルセデスにまつわる素敵な体験談や思い出を綴っていく新連載「A Mercedes Moment かけがえのない瞬間(とき)をメルセデスとともに」。第1回は、黒のステーションワゴンを愛車とする、スタイリストの物語だ。

Illustration: Karen Greenberg
Editor: Junko Hirose

黒いボディと黒いレザーシートを持ったCクラス ステーションワゴンが、私のところにやってきたのは7年前。スタイリストの仕事が軌道に乗り始めていたちょうどその頃、私はあるタレントさんから、撮影のための衣装集めのオファーを受けていた。そのタレントさんは、私にとってかねてからの憧れ。私は彼女の新しい一面を開拓しようと張り切って、ちょっと冒険したスタイリングを組んで、衣装合わせに持って行った。
結果は、全て却下。自信を持って持ち込んだ衣装だが、タレントさんの好みや世間のイメージに合わなかったのだ。私は絶望的なまでに落ち込んだ。
翌日の土曜日、元気のない私の顔を見て、妹がドライブに行こうと提案してくれた。助手席に妹、後部スペースには買ったばかりのペット用のベッドを置いて、2匹のパピー(ブラックシーズーのぼたんと、ゴールド&ホワイトシーズーのさくら)を乗せた。
東京から2時間ほどクルマを走らせ、伊豆スカイラインのパーキングエリアでクルマを降りた私は、新緑の山間を望み大きく深呼吸をしてみた。ふとクルマに目をやると、開け放った助手席の窓から、ぼたんとさくらが無邪気に顔を出している。五月の風が黒と白の毛並みをなぶり、目を細めてこちらを見ている姿に、家族のような愛おしい気持ちが沸き起こり、思わず駆け寄って抱きしめた。
自信を失いかけた辛い経験も、今となっては、スタイリストはどうあるべきかを考えるきっかけを与えてくれた貴重な機会だったと思う。
あの日私を癒してくれた愛犬たちも、今は妹の嫁ぎ先である仙台にいて、なかなか会うことができない。だが、あの瞬間を彩ってくれた黒のステーションワゴンだけは、変わらず私の側だ。朝から晩まで、服や小物の貸し出しに回る私をいつもサポートし、ぼたんとさくらの分まで応援してくれている。

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