
車通りの少ないハイウェイを数百キロ走らせ、これといった目印のない角を曲がった。すると、その先は行き止まり。道路標識が取り外され、道路が砂に覆われていた。そう、メルセデス・ベンツ Eクラス クーペはスペイン南東のタベルナス砂漠に到着したのだ。バックミラーから見える砂煙は、大きな雲のように太陽を覆う。そして耳をすませば、遠くの方でハーモニカの音色が響いている。
ここはまさに西部劇の世界。複数のハリウッド映画のロケ地として知られ、クリント・イーストウッドをはじめ、アンソニー・クイン、バッド・スペンサー、テレンス・ヒルなど、マカロニウェスタンの黄金期を支えた名俳優たちもこの砂漠地帯で撮影を行い、足跡を残した。そして、スペイン出身のフォトグラファー/ブロガー/建築家のアンナ・ポンサ・ロペスも後に続こうとしている。
この日彼女は、ウエスタンブーツやカウボーイハットではなく、砂漠の背景に映えるモダンかつミニマルなアクセサリーをチョイス。そのほとんどは、彼女の私物だ。
「インスタグラムが7年前にローンチされた時、フォトグラファーのためのプラットフォームだと思ったわ。意図的に撮影された写真を投稿するアプリだと。だから自分の作品を披露するためにも、いち早く取り入れたし、今も続けているの」
インスタグラムに写真をアップする時、いつも3~4枚ほどのアナログ画像を撮影しているアンナ。景色やそのテーマによっては、一日で2本のフィルムを使い切ることもあるという。でも一方で、撮り直しができるデジタルカメラでは、たった12枚しか撮影しない。通常フォトグラファーは、アナログカメラで一枚一枚丁寧に撮影し、デジタルカメラで枚数を気にせずに撮影することが多い。要するにアンナは、ほとんどのフォトグラファーとは真逆の方法をとっているのだ。

また、さまざまな都市を観光することで、デザインや建築にも興味を持ち、自然と構図に関する感覚を身につけることができた。その影響で、建築の魅力に取り憑かれ、大学で専攻することに。ファッションウィークで各都市を訪れる際は、建築関連のガイドブックや書籍を必ず持ち歩くようにしている。
「シンプルだけどインパクトのある建築構造が好き。とくに翼のような屋根など、スペインを代表する近代建築物のように、見た目にも軽量でオーガニックなデザインがお気に入り」
ブログをきっかけに注目され始めた彼女だが、ブロガーを一生続けようとは思っていない。すでに将来のビジネスパートナーと連絡先を交換したりして、建築家に転身する準備を進めている。また、建築事務所やデザイナーズホテルとコラボレーションするなど、将来のための土台作りもスタート。
「今とても充実した日々を過ごしているわ。世界のいろんな場所で仕事するのは楽しいし、やりたいプロジェクトもたくさんある。それに将来、建築家として仕事をすることに興味があるの」
しかし、それまでは引き続き、自身のファッションブログに専念し、好きなパートナーとコラボできる贅沢な時間を満喫したいと語るアンナ。実際、彼女が関わっている多くのプロジェクトには、建築やデザイン的要素もたっぷり含まれている。その証拠に彼女は、メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク(@MBFW)のフォトシューティングでも、スペインのアンダルシア地方にある都市アルメリアをコンセプトに取り組むことにこだわった。
「私にとってオリジナリティはとても大事。一時的な流行やありふれたもののコピーはしたくない。独自のやり方で仕事に向き合いたいと思っている。だけど、最新トレンドもきちんと把握しておきたい。そのバランスをキープすることが私の創作活動のキーとなっているの」