Story / Vol.10

シンプルライフの美学

ミニマルなカット、高品質のファブリック、飽きのこないデザイン、そして何より大切なのは、着ていて心地良いこと。『ADAY』がデザインするのは、オフィスからナイトパーティーまで着られるシンプルな服。ニューヨーク・ソーホーにあるスタジオで、創業者二人にデザインの裏に隠された哲学などを聞いた。

『ADAY』スタッフが働く、ラファイエット通りの明るく風通しの良いオフィス

『ADAY』スタッフが働く、ラファイエット通りの明るく風通しの良いオフィス。窓からはバスのクラクションなど、ニューヨークの街の音が入ってくる。だが、窓を閉めるという選択肢はない。なぜならエアコンが壊れ、扇風機ではとても用をなさないからだ。「スタートアップには、困難がつきものよね」とNina Faulhaber(ニーナ・ファウルハーベル)は笑う。

ニーナは今以外の環境を、想像できないという。「私はずっとビジネスを始めたいと思っていたの」。共同創業者であり、北京とロンドンで育ったMeg He(メグ・ヒー)も同じ考えだ。「スタートアップを立ち上げることは、自分たちのヴィジョンを現実にできることを意味しているわ」。

ニーナ・ファウルハーベルとメグ・ヒー

二人はロンドンの投資銀行で働きながら、『ADAY』創業を考え出した。週に120時間勤務、締め切りや残業に追われる日々は、アクティブなライフスタイルと結びつかなかったからだ。ヨガインストラクターの資格を持ち、マラソンやロッククライミングを楽しむメグが続ける。「アクティブに生きることは、私たちにとってとても重要なの。体を動かすことが大好きだから。ランチタイムにジョギングするとか、小さなことが大きな違いを生むのよ」。しかしオフィスのドレスコードがシャツとパンツスーツなら、それすらままならない。

「仕事服より、スポーツウェアの方がリラックスできるわ」。そう話すニーナは、ユースとして競技レベルで体操に打ち込んでいた。今もよくジョギングをしているそうだ。

そこでニーナとメグは、クラシックな服を新しく解釈し始めた。たとえば伸縮性のある素材を使ったブラウスや、仕事帰りにヨガやジョギングに行かれるほど動きやすく快適なレギンスだ。


 

彼女たちは革新的なデザインや素材の服を提供することで、それが顧客の“定番”服になり、生活がよりアクティブに、そしてよりシンプルになると考えている。「子どもの頃は、服のことなんて考えなかった。でもいつしか私たちは、常に新しい服を買うようになっていたわ。服を買うために、たくさんの時間やお金を浪費するなんてもったいない。だからまた服について、悩まなくてもいいようにしたいの」。これはメグも変えたかったことだという。「そうなったら、もっと他のことに頭も時間も使えるでしょ? どうしたビジネスをより成長させられるか、とかね(笑)」。

そしてニーナとメグは、本社をロンドンからニューヨークに移転した。「ソーホーには、多くの人が集まっている。起業家に創業者、地元の人に観光客……そこから最高のものが生まれるわ」とメグは言う。


 

この街は彼女たちにインスピレーションを与えるだけでなく、他の創業者たちとの交流も可能にし、それが『ADAY』を前進させる。それはまさに彼女たちのあるべき姿だ。「スタートアップで働くなら、ゴールはない。常に発展して、進歩しているものだから」とニーナ。彼女たちにとって、毎日が挑戦である。ポップアップショップ開店に向けて準備をしたり、テーラーや生地生産者を訪問したり……そしていつかエアコンの故障も直るはずだ。

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