
昨今、1990年代のメルセデスの需要が増えている。『NU Slippers』創業者であるジュリア・セイターは、1990年製W124クーペ・スポーツラインのオーナーだ。メルセデスとジュリアの関係は、フライブルク近郊に居を構える彼女の家族やそれにまつわる歴史にも繋がっていく。セイター家は1950年代からメルセデスを愛し、それは彼女に大きな影響を与えた。彼女にとって“ファースト・カー”となる母親のクルマ(124 Saloon)で運転を覚えた彼女が、後にクーペ・スポーツラインを購入するのは自然の流れと言えるだろう。
ブルーブラックのボディにダークウッドとレザーを使用した内装、ワイドなスポーツタイヤを装備したモデルは、2013年から彼女の相棒だ。

先述した『NU Slippers』は、たった400グラムのナイロンメッシュ製サマーシューズを販売していた叔母と彼女が立ち上げたブランド。ポルトガル語で“NU=ネイキッド(裸)”の意味を持つその名の通り、通気性の良いソールが足を包み込み、まるで裸足のような感覚で歩けるシューズは、今やヨーロッパ全土で販売されている。
“私は母のクルマ(124 Saloon)で運転を学んだ。それから二度と自転車に触れることはなかった” −ジュリア・セイター
彼女の美学は、仕事だけでなく、車からも見てとることができる。重要なのは、独創性。Becker Mexico 830 の代わりに、USB接続もできるジャンセンのオーディオに付け替えた。「ディスプレイは、アンバー色でなくては。ギラギラしたLEDライトなんていらないの」。
昨今、ベルリンではボンネットに“メルセデス・スター”を冠した旧式よりも、ラジエイターグリルにエンブレムを配したモデルが人気だ。そんな中で旧式に乗る彼女は、いつも「愛車を父親から受け継いだのか?」と聞かれるという。「男性は、私が自らこの車を選び、熱狂的に愛しているとは思わないみたい。でもそんなことは、気にしていないの。それにベルリンで車はいらないなんて言う人もいるけれど、この車がどれだけ私の人生を豊かにしてくれたかわからないわ」