She’s Mercedes meets Japan / Vol.23

中山道・北国街道 後編 梶原製作所 渡邊尚希

高度な技術に信頼と尊敬が満ちた伝統の町、高岡

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女たちが旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、メルセデスと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。中編に引き続き秋風の心地よい富山県最後の旅となる今回は、鋳物や漆器など工芸が引き継がれている町、高岡市を訪ねます。

photo/鬼澤礼門 text&edit/石崎由子(uraku) navigator/田沢美亜(uraku)

鋳物の街、高岡市

中編に引き続き、北陸の富山県の旅となる後編は富山県第2の都市、鋳物で有名な高岡市を訪ねます。
高岡市も加賀藩の統治により商業の街として発展した街で、高岡銅器などの鋳物や、高岡漆器が有名です。
また、戦国時代よりさらに遡る万葉の時代、大伴家持が赴任していた地域でもあり、その時期に多くの優れた歌を詠んだことから「万葉の里」とも呼ばれていて、かなり古くから人々が集い栄えた街でもあります。
今回訪ねる梶原製作所は鋳造を行う工場で、前述したように古くから鋳物作りが盛んな街でしたが、明治維新後、廃刀令により多くの刀鍛冶職人がこの産業に参入したことにより、日用品だけでなく美術品などにまでその製品の場を広げ発展していったそうです。

そんな伝統を受け継ぐ職人の街、高岡市を走る車は、前回に引き続きメルセデスの100%電気自動車、EQA 250です。カラーはマウンテングレー。
これまでのメルセデスEQと同様、新感覚とも言える滑らかで静かな走りと、コンパクトになった車体ならではの足捌きが、古い街並みの路地などでもストレスなくスムーズに走れます。とはいえ車内は見た目のコンパクトからは想像できないほど広々としていて、運転手だけでなく同乗者も快適にドライブを楽しめます。
富山市から高岡市までは車で40分ほどの距離なので、戻ってきたら富山県庁にある急速充電スポットに立ち寄ろうかなと考えながら運転していたら目的地の「梶原製作所」へ到着です。

一貫して全ての作業を行う

鋳物、鋳造の街という雰囲気が感じられる工場がいくつか立ち並ぶ場所に梶原製作所はあります。
この場所へは前編でお話を伺った川原さんに案内、同行をお願いしての訪問です。
私たちが訪れると渡邊さんが入り口で待っていてくださいました。鋳造という仕事から勝手に抱いていた無骨なイメージとは違い、すらっとして物腰の優しい穏やかな印象の方です。
川原さんにご紹介していただき、和やかな雰囲気でご対面です。これから緊張感漂う鋳造の現場を訪れるという気配は感じず柔らかな空気感漂う中、ゆっくりと説明してくださいました。

この鋳物を作る鋳造という仕事は、大まかには型を作るところ、金属を溶かして型に入れるところ、できたものを磨き上げるところ、色つけするところなどの工程があり、ここ高岡では古くからそれぞれの工程を専門的に行う工房や会社が、関わり合いながら製品を完成させていくという分業制で基本的には行っています。
しかしこの梶原製作所は一貫して全てを行うという高岡では珍しい会社で、そのためか仏像や美術品など大きなものも多く手がけていらっしゃるそうです。私たちが何気なく訪れているお寺の仏像は、実はこちらの製作物なのかもしれないと思うと、不思議な気持ちになります。
全ての業務をこなすこともあり、高熱で金属を溶解し注ぎ込む作業は週に1度しか行わないそうで、今日はちょうどその日に当たるとのこと、私たちも普段見られないダイナミックな様子を見学できることにワクワクしていました。
溶解炉の温度が上がるまで型作りを見に行きましょうということで、まずは粘土で原型を作る作業を見に行くことにしました。

She’s Mercedes meets Japan Vol.23_5144

芸術的な原型製作

作業場に入ると、大きな仏像や、オブジェ、お相撲さん、歴史上の人物像などがたくさん並ぶ不思議な空間が広がっていました。広いその空間のほぼ真ん中に粘土で人型を作っている方がいらっしゃいました。原型師の新井浩二さんです。
タイミングよく、ある企業から依頼された胸像の粘土原型の仕上げの工程に、取り掛かっているところでした。近づいてじっくり見せていただくと、まるで生きているかのような完成度に驚きます。しかもこれが手元に2枚ある写真のみで製作しているというのですから、ますます驚きを隠せませんでした。写真から受ける細部の正確さだけでなく、そこから伝わる雰囲気のようなものを表現していく芸術的センスがかなり必要なのではと感じました。

この原型作り、まずは大まかな骨格になる部分を木枠で組んでそこに縄を巻き、なんとなくの形を出したものに粘土をつけて形を作っていきます。ちょうど隣に木枠の型が置かれていて型作りの工程がよく理解できました。大きな仏像など作るときは、まず小さなサイズで作り、そこから拡大して粘土原型を製作していくのだそうです。
この粘土原型ができたら石膏を吹き付け固まったら外し、メス型と言われる型を作ります。
その石膏の型の内側に樹脂(他の素材の場合もあります)を吹き付けまた外し、鋳造のための型を作っていきます。鋳造物の中は空洞にしなければならないので、6mmぐらいの厚さを控えた型をここから作成します。鋳造用の型を作るまでに実に3回同じ型を作ることになるようで、とても手間のかかる仕事です。よくある人型の像などは完成までに3ヶ月はかかるとおっしゃっていました。新井さんは原型師として働いて20年ぐらい、仏像や、粘土に触れているのが好きなのでこの仕事についたのだそうです。
普段見ることができない場面を見学しその技術と手間に驚いていたら、そろそろ温度が上がってきたのでと声がかかり、また違う作業場へ移動です。

力強さと繊細さを垣間見る鋳造作業

先ほどの原型製作を行なっていた波岡から、ほんの少しだけ離れた横田町というところに鋳造を行う工場はあります。
工場に入るとゴオーというかなり大きな音が響き、たくましい姿のスタッフの方が溶解炉の周りで作業されていました。
溶解炉の中から黄金色と赤が混じった炎が見えます。その中に大きな長いパイプのようなものを入れて何度も何かを確かめているようで、渡邊尚希さんに伺ったらあのパイプは温度計なのだとか。流し込む金属の温度は大体1200度ぐらいで、午前中から温度を上げてちょうど良い温度になるまで待ちながら様子を見ているのだそうです。大体2〜3時間かけて温度を上げていくのだそうです。
今回使用している金属は銅合金のブロンズで、温度が上がりきると溶解炉の口が横に倒れ、まずは作業するために桶の形をした“とりべ”という容器に流し込み、そのあとに少しずつ型に流し込んでいきます。

その作業の様子は、クレーンを使ってスタッフが声を掛け合いながら型に流し込み、力強く躍動感を感じながらも繊細で緊張感があり息を呑む瞬間でした。
「そこ右、もう少し左、ああちょっと前!」といった具合でそれぞれが呼吸を合わせて、小さな型の口にゆっくりと正確に流し込んでいきます。少しでも的が外れたら大惨事、お互いの信頼関係がなければ到底できない作業だなと、見ている私たちもハラハラドキドキが止まりませんでした。

工場に置かれているたくさんの型に、溶けたブロンズを流し込む作業が終了し、ほっと一息ついたら今度は型をハンマーなどで外していきます。流し込んだ金属は大体10分〜20分で固まるので、最初の方に流し込んだものから順番に外していきます。この作業がかなりダイナミックで、打ち壊す。という表現の方が正しいくらいの力強さです。
緊張感のある作業を終えると、スタッフの方々は一気に柔らかな表情になり、工場内が和やかな雰囲気へと変わります。とても仲が良さそうで、お互いを信頼しているからこそこの作業が成り立っているのだなと改めて感じました。

120年作り続ける鋳物

ダイナミックな作業を見せていただいたあと、今度は金屋町にある、磨きや仕上げを行なっている、工場へと移動してゆっくりお話を伺うことにしました。こちらは横田町の工場と違い、とても静かな場所です。
ここでは製品を組み立てたり、磨いたりの最終仕上げを行います。またさまざまな型や、型を止める太い金具などもたくさん保管されていました。

梶原製作所の創業は明治35年、今年でちょうど120年続く鋳物を製作する鋳造工場です。
実は渡邊尚希さんは今の社長の娘さんと結婚されてからこの世界に入ったのだそうです。この仕事に就いてまだ10年、しかも他の鋳造工場とは違い、全てを行う工場なので覚えることは本当にたくさんあり、日々まだ勉強を続けているのだそうです。
最初は驚くことがたくさんありましたが、少しずつ慣れてきたそうで、溶解炉の炎の色が空気の量や不純物で緑、黄色、赤、など変わるところも見分けられるようになるなど、作業していて感覚で判断できることが多くなってきたのだとか、「作業中に降りかかる少しの火の粉は全く気にならないですよ」の言葉には私たちもびっくりしました。
また“湯づら”という溶けた金属の表面が空気に触れることによりどんどん酸化していくのを、頃合いを見ながら取り除いていく作業もあり、高温で溶けた金属を扱う危険な仕事なのだなと感じました。私たちの驚きとは裏腹に、渡邊尚希さんはその作業中、取り除いて新たに顔を見せる“湯づら”は黄金色で綺麗なんですと笑顔で話されているのが印象的でした。

受け継がれる職人の心

分業が当たり前な鋳物製作において全てを行うという新しいスタイルをとる梶原製作所ですが、地域とのつながりは大切にしていて、高岡全体が盛り上がっていくことを考えていると語ります。ここ高岡の伝統産業青年会はさまざまな活動をしていて、他の地域に比べると製作や販売、後継者のことなど伝統産業が抱える問題に積極的に取り組んでいます。鋳物だけでなくたくさんの伝統産業が残る高岡なのですが、それは携わる彼らの努力から残されているのだなと感じます。
渡邊尚希さんも青年会の一員で、古いものや残したいものを大切にしつつ、新しいものにチャレンジしていくという考え方はしっかりと高岡職人の一員として心に刻まれているようです。

また、渡邉尚希さんは手仕事しかできない部分は残しながら、3Dプリンターを使うなどの新しい技術はどんどん取り入れたいと語ります。その一方で、まだまだ自分の知らない昔の型などが工場に埋もれていて、それを掘り起こして今の商品に反映させたいと考えているのだそうです。

江戸時代から続く高岡の鋳造技術を支えた高岡の職人たちのつながりは、分業という形から生まれるそれぞれの職人同士の信頼や尊敬があったからこそなのかもしれません。
それは“高岡伝統産業青年会”の「ガラは悪いが、腕は良い。伝統工芸都市若手職人衆」というキャッチフレーズからも感じられます。
ここ梶原製作所でも全ての作業を行うからこそ、信頼や尊敬が深く根付き、さらに新しい可能性を広げているのかもしれません。
高度な技術と共に受け継がれてきたお互いを信頼し合い、尊敬し合う心、相手を知る心を知り、息を合わせることは、この高岡という職人の街の本当のシンボルであり宝なのかもしれないと思いながら、空が夕日の染まり始めた高岡を後にしました。


 

富山の充電スポット

富山の充電スポット

富山県庁舎駐車場内(富山県富山市新総曲輪1-7)
住所:富山県富山市新総曲輪1-7
お問合せ:富山県生活環境文化部環境政策課 電話:076-444-3141
利用可能時間:平日8:30〜17:00
利用料:無料
 
*他にも充電スポットは多数あります。

工房データ

株式会社 梶原製作所

株式会社 梶原製作所

〒933-0842 富山県高岡市横田町3-3-22
TEL: 0766-23-0279
http://kajihara-ss.com/

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)の2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えていく事を目的にし、そしてそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。また梅仕事を伝えるため栽培から生産まで行い、その際に出る剪定枝を使用した草木染め事業もスタートするなど、手仕事と循環をテーマにしたライフスタイル提案も行なっています。

ABOUT CAR

EQA 250

メルセデス・ベンツの電気自動車ブランド、メルセデスEQのコンパクトSUVモデル。静粛性が高く、室内空間はフューチャリスティック&ラグジュアリー。パワフルなモーターを搭載しているので立ち上がりもスムーズ。EQCと同じく、新しいクルマの楽しみ方を教えてくれる一台です。

Share on:

*/ ?>

Mercedes-Benz LIVE!

メルセデス・ベンツの
ブランドポータルサイト
Mercedes-Benz LIVE!もチェック