She’s Mercedes meets Japan / Vol.21

甲州街道 後編 やなのうなぎ観光荘 オーナー宮澤健

俯瞰した眼差しで未来を想像し創造する老舗鰻屋

日本各地に伝わる手仕事や、受け継がれてきた技を次世代へ伝えようと、活動をしている「uraku」。彼女たちが旅のみちみちで出会う日本の美しい風景や物、事、そしてそこに集う人々のつながりを、Mercedes-EQと共にみつめる旅紀行。女性2人ならではのロードストーリー。Vol.21の最終話となる後編は前、中編に引き続き長野県諏訪盆地へ、諏訪湖の西側に位置する岡谷市にある老舗の鰻屋さんへ向かいます。「諏訪未来デザイン会議」のメンバーでもあり、この地域の歴史と未来をつなぎ、新たな取り組みに挑戦する方を訪ねます。

Photo / 鬼澤礼門  text&edit / 石崎由子(uraku)  navigator / 田沢美亜(uraku)

諏訪湖から天竜川へ

諏訪未来についていろいろ教えていただきながら、諏訪湖の美しさを堪能した後、この旅で最後に訪れるのは、諏訪市の隣り岡谷市にある鰻屋さん「やなのうなぎ観光荘」のオーナー宮澤健さんです。
実は彼も「諏訪未来デザイン会議」のメンバーでもあります。
岡谷市は諏訪盆地にある都市で、諏訪湖の北西、諏訪市とは湖を挟んで反対側に位置します。
諏訪湖から流れる天竜川を有し、この天竜川は遠く静岡県浜松市まで流れ太平洋へと注がれます。
標高が高く周囲を蓼科、八ヶ岳など日本を代表する山々に囲まれた諏訪盆地は、前、中編でも触れましたが、「東洋のスイス」と言われこの岡谷市も諏訪市と同じく精密機器関係やシルク産業関係が栄えた町です。
日が傾き始め、また違った美しさを見せ始めた湖の景観を、楽しみながら走る車は前回に引き続き、メルセデスが未来の地球のことを考えて2019年に発表した、100%電気自動車のEQC 400 4MATIC、カラーはハイテックシルバーです。
夕方になるとまだ少し肌寒いこの地方ですが、それぞれのシートごとに温度設定ができるので、室内の環境はとても快適です。運転中でも「ハイ、メルセデス」と声をかけてお願いすれば調整してくれます。大きな車体の割には小回りが効くので、川沿いの蛇行した細い道も、スムーズに走れます。
さて水辺のドライブを楽しんだら目的地の「やなのうなぎ観光荘」へ到着です。

古くから伝わる「簗(やな)漁」

お店に到着すると、宮澤健さんが笑顔で迎えてくださいました。お店の広い敷地の一角に、一際目を引く趣のある茅葺き屋根の建物があり、私たちはそこへ案内されて、鰻をいただきながら、ゆっくりお話を伺うことになりました。お店は川沿いにあるので、お部屋から川の景色を眺めることもでき、テラスもあるので天気の良い日などは外でもゆっくり食事をすることができます。到着した時間は山にかかる夕日がちょうどきれいな時間でした。

「やなのうなぎ観光荘」は岡谷市の市街地から30分ほど天竜川に沿って下った場所にあります。
私たちが案内された茅葺き屋根の建物は、この地方で盛んだった「簗(やな)」という竹などで川に仕掛けを作り、鰻や川魚をとるやな漁の時に使われていたもので、もともとは、もう少し川下にあった建物をこの場所へ移築したものだそうです。建てられたのはおそらく江戸時代後期ごろで、やな師だった宮澤健さんのおじいさまが使用されていたのだそうです。「やなのうなぎ観光荘」の店舗本館は隣にあり、こちらの茅葺の店舗は別棟となっていて、予約して使用できるそうです。
岡谷市で最後のやな師だった宮澤健さんのおじいさまは、やな漁をやめられた後、昭和29年に蛍がきれいなこの場所で、川魚をいただきながら楽しめるお店として「やなのうなぎ観光荘」をオープンさせ今に続きます。一時は工業排水などのため諏訪湖も天竜川も汚染されてしまったので姿を見せなくなっていた蛍ですが、水質を改善させる活動などを行なったため、少しずつもとの美しい姿に戻り、蛍もちらほら姿を見せ始めているそうです。

地域の特性を生かした鰻の養殖

そんな昔のやな漁のお話を伺いながら鰻料理を注文し、お料理がくるまでの間、奥の厨房も少し見せていただくことにしました。お伺いした時には鰻の捌きは行っていなかったので、焼き場だけ見せていただきます。
「やなのうなぎ観光荘」は関東の鰻の調理法と違い、捌いたら蒸さずに焼きます。
味の決め手となる秘伝のタレをたっぷりとつけて、炭火でじっくりと時間をかけて焼き上げていきます。なぜじっくり時間をかけるのかというと、一気に温度を上げて焼いてしまうと、タンパク質と脂肪分が分離してしまい、硬くなったり、脂が落ち過ぎてしまい旨味が少なくなったりしてしまうのだそうです。またその他にも、鰻の中の水分が蒸発しきらない前に焦げがつくので、鰻の中に適度な水分が保たれ、しっとりとした舌触りになるのだとか。
この焼き場での火加減と時間が、最終的にお料理の食感と味わいの決め手になるのだなと思いながら、鰻の芳しい香りを嗅いで食欲がさらに増してきてしまいました。
さてこの後は鰻料理をいただきます。

今回、いただいたのは「やなまぶし丼」です。
フワッとした柔らかさとパリッとした香ばしさが共存した食感が心地よく、しっかり脂も乗り奥深さを感じながらも、後をひかないさっぱりとしたクセになる味わいです。これがじっくり時間をかけて、火の様子を伺いながら焼き上げたからこそ味わえる、旨みと食感なのだなとしみじみ噛み締めていました。
そういえば中編でお話を伺った岡さんは、鰻が苦手だったそうですが、こちらの鰻をいただいてからすっかり鰻が好きになったそうです。
その他にも、「焦がしねぎひつまぶし」「大葉ひつまぶし」など気になるオリジナルメニューもあり、次回は違うメニューをいただいてみようと思いました。

おじいさまからお父様、そして宮澤健さんへと引き継がれた鰻への思いは、新たな取り組みを初めて、さらに進化を遂げています。
一つは、岡谷市がかつて盛んだったシルク産業を活かした鰻の養殖です。
近年ニュースなどでもかなり報道されていますが、日本鰻は絶滅危惧種に指定されています。そんな背景もあり、できるだけ安全で安定した鰻の供給をお客様へという思いと、地域の魅力を活かして貢献できたらという思いから始まった愛知県豊橋市の夏目商店との取り組みで、オリジナルのブランド「シルクうなぎ」の養殖開発を行なっています。
この「シルクうなぎ」は、同じく岡谷市にあり日本で唯一となってしまった伝統的な製糸工場、宮坂製糸さんから蚕のさなぎを買取り、そのさなぎをブレンドした餌を鰻に与えて育てていて、上質で、従来の鰻よりあっさりした脂が特徴です。今まで鰻が苦手という方などにも好まれるそうです。
鰻屋の看板を掲げているからこそ、国産鰻を作る意味をしっかり持ってお客様へ提案していく、
そんな姿勢がとても一本筋が通っているなと感じました。

故郷を俯瞰して見つめる

そんな宮澤健さんですが、一度はこの岡谷市を離れ東京でミュージシャンとして活動されていたのだそうです。今回いろいろお話を一緒に伺っている奥様の宮澤玲さんも同じように東京で音楽活動をされていて、出会ったのだとか。実は中編でご紹介した岡さんも音楽を通して仲良くなったそうです。一度異業種を体験し、また故郷からも離れて遠くから俯瞰して見ることができたということが本当に良かったと宮澤健さんは語ります。
お二人は夫婦揃って「諏訪未来デザイン会議」のメンバーでもありますが、俯瞰した眼差しで、この諏訪地域のことを見ることができているからこそ、地域の良さや、足りないこと、まだまだ伸びるポテンシャルについてもしっかり見つめることができるのだと思います。

そんな遠くから見つめる眼差しがあったからでしょうか、もう一つ宮澤健さんが取り組んでいるのは、故郷からかなり離れた場所「鰻を宇宙食へ」という取り組みです。
まだ試作品を製作している段階ですが、ISS(国際宇宙ステーション)へ運ぶ宇宙日本食の認証に向けて試作を重ねています。
実際製作にあたり、宇宙飛行士の由井さんや古川さんにお話を伺って、宇宙で何を食べたいですかと質問したらお二人とも「鰻が食べたい!」とおっしゃってくださったそうで、宮澤健さんのモチベーションはかなり上がり、今夢に向かって試行錯誤を重ねているそうです。
私たちが伺った時に、ちょうど試作品が届いていて見せていただきました。この鰻がいつか宇宙に行って宇宙飛行士たちの食卓を彩る日が来るのかもしれないと思うと、本当にワクワクしてきます。

諏訪の神様に見守られて

過去のお話から未来のお話まで楽しく伺っていたら、「こんばんは」と声が聞こえ、「諏訪未来デザイン会議」のメンバーがいらっしゃいました。
今日はメンバー全員ではありませんがメンバーが集まって小さな会議が行われるのだとか。私たちも少しだけ参加させていただくことにしました。
いらっしゃったのは、前編で登場していただいたリビルディングセンタージャパンの東野 唯史さんと、3年前に伺った宮坂醸造の宮坂 勝彦さんです。
緩やかで和気藹々とした雰囲気の中、情報交換や、意見交換がされていて、自分たちの街のことをこんなふうに愛情もって考え、その思いを共有できる仲間がいるということが、どんなに素晴らしいことかと感じていました。

地域の繋がりがあってこそ自分たちの仕事が成り立つということをしっかり心に刻んだ彼らが、それぞれの仕事で引き継いできたものを未来へ繋ぎ、地域へ還元することを忘れず、またこうやって集まることにより、もっと大きな規模で何かを動かそうとしています。
より良い未来はこうやって作られ、歴史に刻まれていくのではないかなと思いながら、彼らの話し合いを聞いていました。
楽しそうに交わされる彼らの話し合いの場所の傍らには、お守りとして飾られた諏訪のお祭りで有名な御柱祭の御柱の一部があり、まるでそっと彼らを見守っているかのようでした。

店舗データ

やなのうなぎ 観光荘 岡谷本店

やなのうなぎ 観光荘 岡谷本店

長野県岡谷市川岸東5-18-14
TEL : 0266-22-2041
https://kankohso.co.jp
定休日 : 木曜日(春季休業あり)
営業時間 : 昼11:00 – 14:00(L.O)
夕16:30 – 20:00(L.O)
専用駐車場はございます

<urakuプロフィール>  http://urakutokyo.com/
ファッション誌や広告などで活躍中のモデル田沢美亜(たざわみあ)とプレスやディレクションを務める石崎由子(いしざきゆうこ)2人で立ち上げたユニット。
日本各地に残るぬくもりある手仕事や確かな技、それら日本人が大切にしてきた美意識や心を現代の生活や次世代に残し伝えて行く事を目的にしています。またそこから海外への発信、架け橋になるようにと活動を続けています。

<Special Thanks>
MARGARET HOWELL:Tops、Pants

ABOUT CAR

EQC 400 4MATIC

ダイナミックな走りとスポーティなデザインが特長のメルセデス・ベンツの電気自動車、EQC。最新のリチウムイオンバッテリーを搭載し、フル充電で約400kmの航続距離を誇ります。静粛性も高く、室内空間はフューチャリスティック&ラグジュアリー。新しいクルマの楽しみ方を教えてくれる一台です。

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