未来のモビリティとリビングのあり方を定義する。「EQ House」、六本木に出現!

photo: Toshitaka Horiba
words: Masanori Yamada

2019年3月13日より、約2年の期間限定で一般に公開。メルセデス・ベンツ日本と竹中工務店のコラボレーションにより生まれた、最先端の体験施設の全貌をレポートする。

上野金太郎

「ダイムラーのパワートレイン開発は現在、高効率のガソリンエンジン、クリーンディーゼルエンジン、プラグインハイブリッド、燃料電池、電気自動車と、お客様のニーズや用途に応じて全方位かつ多岐にわたっていますが、今後は電動化が加速していくことになります。そうしたなか、”Electric Intelligence”を意味するEQは、電気自動車だけでなく、電動化にともなう新技術やインフラ、関連するサービスすべてを包括する新しいブランドとして誕生しました」

EQブランドの日本での本格ローンチとなった発表会冒頭、メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長の上野金太郎はスピーチの中でこのように述べたが、それにはダイムラーが2016年のパリモーターショーで発表した中長期戦略“CASE”の存在が深く関わっている。

Connected、Autonomous、Shared and Services、Electricの頭文字からなる“CASE”とは、端的に言えばモビリティ社会の方向性を示すキーワード(または自動車社会の次世代の姿)である。Mercedes me connectやMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)はC、将来の自動運転につながるレーダーセーフティーはA、シェアカー・プラスやTap! MercedesはS、メルセデス初の電気自動車となるEQCはEといった事例が示すように、 “CASE”が特徴的なのは人とクルマとの関係のみならず、ライフスタイルまで含めた未来のビジョンを描いていることだろう。

“CASE”の概念が浸透するに伴い、近い未来の私たちの暮らしはどうなっているのだろうか──。六本木に出現したEQ Houseという名の真っ白な建物は、その具体的な答えを模索・探求しつつ、誰もが実際に体験できる場として建てられた。

EQ House

“CASE”の概念を住まいに置き換えたとも言えるEQ Houseは、「リビングとモビリティを繋ぐ」をコンセプトに竹中工務店が手がけた。イベント向けの仮設的なものではないれっきとした建築物であり、モビリティチューブとリビングチューブが交差する空間にはガラスインターフェースがあり、IoTを軸とするセンシング、デジタル制御技術がふんだんに盛り込まれている。

窓らしい窓をもたないEQ Houseだが、それに代わるのが内外装に用いられている特徴的なデザインのアルミパネルだ。これは装飾目的のデザインではなく、木漏れ日のような快適な光と自然の風を感じられるよう1年365日の日照パターンをシミュレーションし、プログラムによって形態を生成するコンピュテーショナル・デザインから得られたもの。日射量や太陽の位置、あるいは人の操作に応じて室内の明るさを調節する調光フィルムはプライバシーを確保する役割も兼ねるなど、効率的かつ効果的な設計が徹底されている。

EQ House

建物中央に設置されているのは、室内の温度やクルマの充電状態などのさまざまな情報を表示し人の手の動きや声により室内環境をコントロールすることができるガラスインターフェース。将来はここに、自動運転で走行する予約したシェアカーや宅配ドローンが、そのときどきに収まることになるだろう。

EQ House

リビングチューブにつながるベッドルームには、照明やアロマの香りが人の声に応じて変化する仕掛けが。照明や空調などの操作は人の手の動きのほか、MBUX開発チームと連携した音声認識システムでも行えるようになっており、竹中工務店が開発したビルコミュニケーションシステム「ビルコミ」にAIを実装したことで、暮らす人とのコミュニケーションを通じて個々の好みを学習、最適にカスタマイズされた空間を提供するようになっていくという。

花岡郁哉氏

デジタルデータに基づくアルミパネルの切り出し、ウェアラブルデバイスを活用した施工など、随所に近未来の設計を取り入れたEQ House。竹中工務店のアドバンストデザイングループ長・花岡郁哉氏は、今回のプロジェクトについて次のように述べている。

「モノがインターネットにつながるIoTが、すべてのものがつながるとIoEへと変容するなか、建築はその接点になることが求められています。そして従来、クルマは家の外やガレージに駐まっていましたが、“CASE”によって電動化が進むとモビリティは家の中に入り込み、シームレスにつながるようになります。つまり、電動化・自動化したモビリティを受け入れることを前提にした、新しい建築を考える必要がありました」

そうして誕生したEQ Houseには「リビングとモビリティを繋ぐ」に加え、「Archphilia™」というコンセプトがある。建築:Architectureと、友情や親愛を意味するギリシア語のPhiliaによる造語だ。

「従来の機能を満たす箱では終わらない空間、人が自ら環境にコミットし、建築はパーソナライズされた空間になります。人とコミュニケーションを取りながらその人の好みを学習する建築。人とともに成長する、生命が宿る建築。これこそが、私たちがたどり着いた新しい建築の姿でした」

EQ House

EQ限定メニュー

EQ House

独特の佇まいとともにモビリティとリビングの未来の形を具現化したEQ Houseでは、EQ サンドをはじめとする特別限定メニューを用意するほか、暮らしと結びついたさまざまなコラボレーションイベントを開催予定。また、EQブランドのコレクションの発売も予定されている。近未来のライフスタイルを体験しながら、EQブランドや“CASE”への理解を深めてみてはどうだろう。

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