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プロサーファー大野修聖がVクラスとともに見据える“新たな挑戦”

photo: Taisuke Ota
words: Takashi Osanai

「波乗りジャパン」キャプテンとしてチームを牽引したプロサーファー大野修聖。激戦を繰り広げた場所であり、日本屈指のサーフタウン、千葉・一宮町のビーチへVクラスと再び訪れる——。

サーファーにとってクルマは“自由への翼”

たとえ海まで歩ける場所に生まれ育っても、サーファーにはクルマが必要になる。伊豆・多々戸浜から数十歩の家で生まれ、日本屈指のキャリアを築いた大野修聖を見てきて、つくづくそう思う。

大野 修聖/Ohne Masatoshi

世界を舞台に活躍するプロサーファー大野の実家は、国内のトップサーファーだった両親が開いたサーフショップ「バグース」。これ以上にない周囲の理解と波に恵まれ、大野は幼少期から毎日のように波間で腕を磨き、小学生時代には全国大会で好成績を残すまでに。そして15歳でプロになると国内のプロツアーには参戦せず海外の試合を転戦するようになるのだが、その間、常に誰かに乗せてもらい、湘南や千葉、四国など良質な波のあるエリアへ遠征を繰り返した。グッドサーファーになるためには、多彩な波での経験が不可欠だからだ。

海外進出を果たしたときも世間一般には高校1年生の年齢。運転免許はない。そのためプロサーファーの先輩たちが、後進のため、未来の日本サーフィンのためとして、快く同乗させてくれた。

大野 修聖/Ohne Masatoshi

同乗の日々は18歳の免許取得時まで続く。渡航先の空港から試合会場まで乗せてもらうなど、「幼少期からお世話になってきた先輩たちには感謝の念しかありません」という通り、善意によるサポートがあって大野のキャリアはあると言っていい。だからこそ、晴れて免許を手にしたときには「純粋に嬉しかった」と振り返る。周囲への負担を減らすことができ、また自身も、目指す波へ、行きたいタイミングで、自らハンドルを握って向かうことができた。

クルマは、大野にとって“自由への翼”なのだった。
 

最初に手にした“翼”はメルセデスのVクラス

大野 修聖/Ohne Masatoshi

大野が手にした“最初の翼”はメルセデスのVクラスだ。

「人生最初のクルマを持つにあたり、高級で安全だというブランド観に魅かれたことにプラスして、サーフィン界のゴッドファーザーのような人が所有していたんです。そして“メルセデスに乗るなら自信を持って乗れよ”と言われました。クルマに相応しいオーナーとなるため、プロサーファーとして確かな実績を築く必要性を感じたのを覚えています。実際に乗ってみるとサーフボードや荷物が多く積めるので長期間の遠征も楽でしたし、高速道路での直進安定性が高くて、長い距離の移動も負担を感じませんでした」

海外ベースで動いていた時代、スケジュールが合えば日本の試合にも出場していた。そのときにはミニバンタイプのVクラスに必要な荷物を積み込んで各地へ。例えば日本海沿いの京丹後市が会場なら伊豆から6時間ほどのドライブ。それでも苦にならない快適性、走破生が備わっていたことを記憶している。

大野 修聖/Ohne Masatoshi

そして今回、およそ20年ぶりにVクラスに乗って千葉・一宮町へ。「優雅な走りは変わりませんね」という大野は、改めてユーティリティさに目を見張っていた。

「ラゲッジルームの大きさはとても魅力的です。7本入りのサーフボードケースが2本、つまりショートボード14本くらいは優に載せられますし、試合や国内サーフトリップの際に頼りになるキャパシティです。またロングボードもシートを倒せば真っ直ぐ入るため、海に多彩なサーフボードを持っていきたいサーファーには格好の1台だと思います。さらに2列目のシートを取り外して使えば3列目をフルフラットにでき、サーフィンの合間の休憩も快適に過ごせます」

そんなラグジュアリーながら使い勝手もいいVクラスに乗りやってきた一宮町は年間を通して波がコンスタントにあり、近年移住する社会人サーファーも増えている日本を代表するサーフタウン。さらに九十九里のコーストラインに点在するサーフスポットのなかには、先のサーフィン競技の会場となった釣ヶ崎海岸がある。サーファーの間で「志田下」と呼ばれる同ビーチでは、2021年の夏に日本から2人のメダリストが誕生。大野はキャプテンという立場で代表チームに帯同し、歓喜の瞬間に立ち会った。

「スタッフと選手の間に立って、チーム内に良い雰囲気を作りだす潤滑油のような働きを求められました。僕自身まだ現役。一緒に海に入ることができるので、選手たちと良いコミュニケーションが取れていたと思います。そして選手たちの心境をスタッフにフィードバックする。そのような役割でした」

大野 修聖/Ohne Masatoshi

サーフィンは個人競技。だが先の大会ではチームとして各々が称え合うムードが生まれていたという。

「練習でも本番でも相乗効果があったように思います。誰かが良いサーフィンをしたら、“よし、俺も続くぞ”という気概を見せたり。僕らの時代やそれ以前は個人競技の側面が強く、“1人しか生まれない優勝者には俺がなる”という気持ちを誰もが持っていました。でもそうした独善的な姿勢は彼ら若い世代に見られず、チームとして良い雰囲気が生まれていたんです」

若い世代による独特のグルーヴを新鮮に感じた一方、代表チームが解散し、選手たち個々が自身の夢を追うため世界を駆け巡っている今、やはり大野は「勝つのは俺だ」という強い意識が必要だと感じている。

大野 修聖/Ohne Masatoshi

「世界の舞台はやるかやられるか。文字通りに弱肉強食で、上に行けるのはどのような逆境でも勝ち切れる人です。そしてメンタルの強弱は経験値次第です。実は20代のころ、そのことを僕もカリフォルニアで痛感しました。数万人規模の観客を集めたハンティントンビーチでのUSオープンで、会場の雰囲気に呑まれ早々に敗退したことがあったのですが、そのときに小さな子が来て“ここで勝つのなんて簡単じゃん”と言ったんです。それが(プロサーファーとして活躍する)五十嵐カノアでした。ハンティントンを庭のようにして生まれ育ったカノアにとって、衆目に晒される状況はいつものこと。もしかしたら15歳で本格的に海外の試合を転戦し始めた自分でも遅かったのかもしれない。そう思わされた出来事でした」

普段からハワイの大波でサーフィンしている人と、サイズの小さなビーチの波が日常の人と。世界チャンピオンがいる海で普段から練習している人と、そうでない人と。両者の間ではサーフ環境のスタンダードが違い、よって進化のスピードが違う。もし到達したいところが世界の舞台なら、後者の環境にいる日本のサーファーは、前者の世界基準の環境で日々練習するサーファーとの差を埋める方法を思考し、行動する必要がある。自らの実体験から、そう大野は考える。
 

Vクラスとの再会。そして新しい挑戦へ

また、競技だけではないところもサーフィンの魅力だと、大野は言う。

「僕はずっと選手として勝利を追求してきました。けれどサーフィンにはいろんなスタイルがあります。サーフボードのデザインも多彩ですし、またサーフボードを使わず身体ひとつで波に乗るボディサーフィンもあります。サーファーが創るアートや音楽があることから、サーフィンはカルチャーでありライフスタイルでもあるんです」

ずっと選手として生きてきたからこそ、今、サーフィンの多面性を自ら楽しむ。そして、その楽しさを多くの人に伝えたいと思い、生まれ育った多々戸浜でイベント「FUN the Mental」をプロデュース。用意した多彩なデザインのサーフボードを参加者たちに使ってもらうことで、みんなで波に乗る楽しさを共有し新たな人材発掘、世界との架け橋をしたいと考えている。

大野 修聖/Ohne Masatoshi

さらに近年は選手としての活動にひと区切りをつけ、よりパーソナルな活動にフォーカス。より良い波を求め、フットワーク軽く行動してきた。映像にも残してきたことで、今後はその軌跡を発表していきたいと考えている。

「今、とてもサーフィンが楽しいんです。試合最優先の生活から離れた今は、良い波を求めて国内外を渡り歩き、出たい試合があれば出場するという感じで、サーファーとしてバランス良く過ごせています。そうすると不思議なもので、フリーサーフィンでも試合でも、もっと上手くなりたいと思えてきたんです」

柔和な表情を見せながら、ごく自然と「上手くなりたい」とこぼした大野。それは自身を縛ってきたカテゴライズから解き放たれ、ひとりのサーファーとして歩み出したことで生まれた純粋な思い。これから人生の新たなステージを築いていこうとする、意志ある言葉だった。

PROFILE

大野修聖/Masatoshi Ohno

大野 修聖/Ohne Masatoshi

1981年生まれ、静岡県出身。アマチュア時代から全国大会で優勝するなど将来を嘱望され、15歳でのプロ転向後は世界最高峰ツアー入りを目指し、二次ツアーを転戦、好成績を収める。一方、国内プロツアー参戦後は3度の年間チャンピオンに輝くなど強さを発揮。近年は、日本代表チーム「波乗りジャパン」のコーチ兼キャプテンに。千葉の“志田下”を会場に開催された大会にも代表チームに帯同した。ほか、サーフィンの楽しさを共有する場として年に一度のイベント「FUN the Mental」をプロデュース。音楽活動、コラムニストなど多彩なフィールドでサーフィンの魅力を発信している。

ABOUT CAR

V 220 d AVANTGARDE

広く上質な室内空間にアレンジ自在なシートを備えたプレミアムミニバン。日常のドライブはもちろんのこと、週末のアクティビティもサポートする。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」のほか、レーダーセーフティパッケージなど最新の安全システムも装備する。乗車定員は6~7名。

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