清水和夫氏が語る、メルセデスとSクラス Vol.4 メルセデスが考える未来

自動車を生んだ会社ゆえの安全と環境の未来をつくる意志。

メルセデスのエンジニアと会っていると、安全と環境に関しては、「自動車の生みの親」として、自分たちが率先して解決するという強い意志と哲学を感じますね。クルマにおける安全という概念を作り出したベラ・バレニー。そして彼の教えを受けたインゴ・カリーナもそういう強い意志を持ったエンジニアでした。そして「技術の継承」というよりも「哲学の継承」を重んじています。メルセデスは来年130周年を迎えますが、130年経っても同じ哲学を継承できるのは、この哲学がメルセデスというブランドにしっかりと刻まれているのだと思います。

メルセデスは、1990年代は衝突安全などの先進的な技術を追求していました。2000年ごろから交通事故がなく、排ガスもクリーンなクルマ社会を目指す(ゼロクラッシュ・ゼロエミッション)という持続可能なモビリティ(サスティナビリティ)というビジョンを掲げ始めました。

メルセデスには、いつも遠い未来のビジョンがあって、そこからバックキャスティング的に、近未来の社会とユーザーのニーズを見つめます。そしてどんな先進技術が必要なのか、しっかりと議論しながら研究開発するのですね。まずビジョンを掲げる。そういうものの考え方が、未来をつくる力になっているのだと思います。

新しい技術は、人や社会にどう受け入れられるのか

今年初めにアメリカで開催されたCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)では、自動運転を可能にするコンセプトカー「メルセデス・ベンツ F 015 ラグジュアリー イン モーション」が披露されました。

そのプログラムダイレクター、社会学者でもあるマカンスキー氏によれば、自動運転というものは、実は社会学者が考えなければならない領域があるとのこと。「人」でなく、「AI〈人工知能〉」つまり「ロボット」が運転し、街の中を動き回ることに対して、人々や社会がどういうふうに受け入れるのか。そこに怖さはないのか。そういうことも考え始めています。

メルセデスは「社会をリ・デザインする」という言い方をよくしています。メルセデスが主催するシンポジウムでは、時に都市計画にまで及ぶことがあり、心理学者や社会学者、時には神学者までいることもある。自動車が社会や文化に深く関係していることを知っているので、開発チームの中に心理学者を入れることもよくあるそうです。