清水和夫氏が語る、メルセデスとSクラス Vol.3 他ブランドとは発想が異なる安全性への取り組み

メルセデスの安全の思想を深く知るため自らオーナーに。

私がマイカーとしてメルセデスに乗り始めたのは、EクラスのW210。そのきっかけは、北欧での試乗会で、SLに初めて搭載されたESP®(横滑り防止装置)を体験したからです。
そこで「片方だけにブレーキをかけるなんてことがアリなのか!」と衝撃を受けました。

ESP®はカーブで横滑りを検知すると自動的に片輪にブレーキをかけてスピンを防ぐという先進的な技術で、当時としては究極の予防安全技術と期待されました。これは、どうしても自分のクルマとして、日本でテストしたいと思ったのです。
その後、安全技術の責任者だったインゴ・カリーナ氏から、W210に導入された新しい安全の概念「コンパティビリティ」(クルマの大きさに関わらず、衝突の被害を互いに分担するという高度な自動車設計コンセプト)の話を聞く機会に恵まれました。そこで、1995年当時のEクラスが安全面で大きなブレークスルーをすると感じ、ESP®が搭載されたE 320 4MATICを購入しました。

他ブランドとは発想が異なる安全性への取り組み。

4MATIC、つまりメルセデスの電子制御四駆は、その考え方が非常にユニークだと、アメリカのある学会で喝采を浴びたことがあるそうです。その当時、他社も、雪道で速く走るために加速性能を上げるべく四駆を使っていました。

ところがメルセデスは、路面の滑りやすさをドライバーに気づかせるために、あえて発進時にズルっとタイヤが滑ったという感覚をドライバーに与える。その後少しタイミングをずらして四駆にすることで、「雪道は滑る」ということを学ぶことができる電子制御四駆だったのです。ロード・インフォメーションをドライバーに知らせることが、大事な技術だと考えたのですね。要するに「何のための四駆なのか」という基本的な考え方が違うんです。

メルセデスは、すべての出発点を安全性に置いて4MATICをつくっていた。こうした予防安全・衝突安全への考え方を含めて、メルセデスが常に何を考えているのかを知ることは、私の職業にとってものすごく勉強になる素材です。メルセデスから学ぶことは、すごくあるという思いがますます強くなっています。